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「64」は横山秀夫の最高傑作!

横山秀夫の「64」を読みました。これは傑作です。最近「光圀伝」や「何者」、「県庁おもてなし課」など面白い小説に恵まれていたんだけど、これは別格ですね。凄すぎる。


もともと横山秀夫の小説は「半落ち」や「クライマーズ・ハイ」などすこぶる面白い作品が多いけど、この「64」は横山秀夫の最高傑作といって間違いないでしょう。


D県警の刑事上がりの広報官が主人公。家庭にも大きな問題を抱えながら、警察では現場とキャリアの間で苦悩し自らのアイデンティティに悩んで仕事をしている。そこに警察庁長官の視察と未解決だった14年前の誘拐事件を真似た誘拐事件が起こる。


次々に起こる難題と意外なストーリー展開。647ページの分厚い本ですが、一気読みです。誘拐事件と新聞社とのせめぎあい、署内の派閥争いの中で試される自らのアイデンティティと矜持。痺れますね。


横山秀夫の「64」、この本読まないと損ですよ。

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面白かった!『何者』と『県庁おもてなし課』

久々に時間を忘れるほど面白い本に出会えた。しかも2冊連続で!朝井リョウの『何者』と有川浩の『県庁おもてなし課』だ。

『何者』は朝井リョウの直木賞受賞作で、就活をする5人の大学生の心の内面を描いた作品。今時の若者らしくそれぞれの登場人物が頻繁にTwitterにつぶやく。ポジティブ過ぎるつぶやきばかりするものや、2つのアカウントを作りサブアカウントでのみ本音をつぶやくもの、誰に見られてもいいように言葉を選んでつぶやくもの、3枚目的なおちゃらけたつぶやきばかりのもの、意識の高い大学生丸出しのつぶやきをするもの。


現実の行動とTwitterでのつぶやきの内容の差を描くことで、登場人物の性格をうまく表現できているように思えた。「就活」を描いた話題作という情報を聞いていたけど、Twitterを上手く使った小説として印象深かった。


『何者』以前では、『桐島、部活やめるってよ』の映画を見て面白かったので、原作をAmazonで検索したところ妙に評価が低かった。でも実際に読んでみたら映画とは違う内容で映画とは違った意味で結構面白かった。高校生のスクールカーストに対する心情を上手に描いてるなと思った。それも含め朝井リョウ。の小説はまだ2冊しか読んでないけど、他の作品も読んでみたくなった。


心の内面の描き方が面白かった『何者』に対して、有川浩の『県庁おもてなし課』はただただストーリーを追うのが楽しい小説。もともと有川浩の小説は『図書館戦争』や『阪急電車』、『三匹のおっさん』、『シアター!』などでストーリーテリングの上手い人だとは思ってたけど、今まで読んだ有川作品ではこの『県庁おもてなし課』が最高だった。


高知県庁が観光立国を目指して発足させたおもてなし課一番の若手の掛水が主人公。掛水が観光発展のためにもがくうちに高知県出身の作家吉門と知り合い、吉門や観光コンサルタントの清遠に「お役所仕事」だの「民間感覚」がないと叱咤されながら成長し、困難に立ち向かいながらも高知県の観光立国化を進めてゆくというお話。


簡単に言ってしまえばサクセスストーリーだけど、それを縦糸とすると、そこに主人公のラブストーリーや吉門のラブストーリー、さらには吉門の父親との関係が横糸として絡む。この辺りすごく上手いと思った。


『県庁おもてなし課』は最近映画化されて、そのキャスティングは主人公の掛水が錦戸亮で相手役が堀北真希と知っていて、読んでいてもそのイメージで読んじゃったけど、全然違和感なかった。でも吉門役の高良健吾はちょっと線細すぎじゃない?掛水の能ある鷹は爪隠すタイプの上司役の甲本雅裕はかなり違和感、あんまり爪隠してる感なし。一番の違和感は清遠和政役の船越英一郎。迫力無さすぎ。イメージ的には原田芳雄かな(無理ですが)。


ちなみに反骨の観光コンサルタント清遠和政は、高知県在住のグラフィックデザイナー、梅原真さんとイメージが被る。自分的には梅原さんがモデルになってるんじゃないかと思うんだけどいかがなもんでしょう?

梅原さんが関わるプロジェクトはなぜ成功するのか?:日経ビジネスオンライン
高知県在住のグラフィックデザイナー、梅原真 ...

こちらは上の日経ビジネスオンラインで連載を書籍化したもの

一気読み『光圀伝』

冲方 丁
角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-09-01
¥ 1,995
冲方丁の『光圀伝』を読んだ。凄く面白くて一気読みした。以前、同じ作者の『天地明察』も読んだがやはり一気読みだった。その時のエントリー→ 『天地明察』と『エースをねらえ!』

もともと『マルドゥック・スクランブル』シリーズでSF作家として有名だった冲方丁だが、前作の『天地明察』で初の時代小説でいきなり傑作を書いて世間を驚かせた。それに続く時代小説2作目の『光圀伝』は前作に負けない傑作だと思った。とにかく読んでいて面白すぎて止まらない。

『光圀伝』は名前の通り水戸光圀の一生を描いた作品だ。あのTVシリーズでお馴染みの水戸黄門だが、TVの印象とは全く違う水戸光圀がここに描かれている。

光圀の生きた江戸初期はとても興味深い時代だ。特に光圀の若い頃は、3代将軍家光の治世で徳川幕府が安定期に入りつつある時代だった。戦は影を潜め文治の世となり、戦で名を挙げられなくなった武士は武道に劣らず文道も修練した。そういう時代背景において光圀も詩で天下を取るとの大志を抱いた。

また光圀は、詩を上達するうえの理論的バックグラウンドとして儒学を徹底的に学んだ。そして、水戸光圀は一生を通して「義」に生きることになる。「義」を大辞林でひくと5つの意味があるが、ここでは
儒教における五常(仁・義・礼・智・信)の一。人のおこないが道徳・倫理にかなっていること。(大辞林より)
を指す。

本書は、そのような環境の中で水戸光圀が
  • 兄を差し置いて水戸藩当主となった不義を解消して大義を全うすること
  • 若い時に誓った詩で天下を取ること
  • 伯父の尾張当主徳川当主の義直から引き継いだ日本に「史記」のような歴史書を作ること(それが「大日本史」となる)
の3つのライフワークを見出し達成するまでをつぶさに描いている。

この3つのライフワークを手がけるにあたって大きな役割を果たしたのは友と妻だ。それぞれ光圀の良き理解者であるとともに切磋琢磨するライバルでもある盟友だった(そういう理解者を持つことの素晴らしさは『天地明察』でも描かれていて、その時は主人公の安井算哲の盟友としての和算の天才・関孝和だった)。その存在がどれほど光圀を救ったか。それだけに、彼らを相次いで失った時の光圀の喪失感は深く、読んでいても辛かった。

また前作との違いは、マネジメント的視点が加わったことだろう。『天地明察』の安井算哲が命じられる側の人間だったのに対し光圀は命じる側の人間だから当然かもしれないが、前作にはない魅力になっている。

三顧の礼を持って招いた明の知識人・舜水の言葉に対し
『一日にしてなるのは紙の城である。百年の歳月をかけるのが石の城である。あなたは一日にしてなるような城を目指すべきではない』
この瞬間、光圀の中で何かが完全に吹っ切れた。あの水道工事のような突貫工事を延々と民に強いる王になってはならないと心のどこかで常に思い続けていた。だがどうにもならなかった。その焦燥の火を、たった今、この老いた賢人の優しい息吹が、あっさりと消し去ってくれた。
若くして水戸徳川の当主となり藩の改革を焦ってしまったことを省み、藩の運営に長期的な視点を持つようになる。

また、子供の縁談を大老の酒井に持ちかけた時に
だから、じっくり布石を打つ。光圀と酒井が、布石を打っているという態度も隠さず城中で見せる。そうすることで既成事実を積み上げていく。
(こうまで、焦ることを知らぬか)
初めて見る生き物に出くわした感じだった。こういう性質を持った人間を将軍補佐に据えた、今は亡き老中たちならびに正之の見識にこそ、惚れ惚れする思いだった。
と、長期的な視点を持つ人物を評価できるようになった。

人物を育てることも含めて長期的な視点を持って事業を運営してゆく大切さを肌で感じさせてくれるマネジメントの教科書にもなっていると思った。

なにはともあれ読んでいてワクワクします。前作の『天地明察』とともにお勧めの一冊です。

冲方 丁
角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-12-01
¥ 1,890

ビブリア古書堂の事件手帳

『ビブリア古書堂の事件手帳』、TVで紹介されていて食指が動いていたところに、いつも行く本屋でちょうど平積みになっていたので読んでみた。ジャンル的には「ライトノベル」なんだろうか。ま、眼鏡で人見知りの巨乳美人がヒロインって設定なんかは、いかにも「ライトノベル」。ただし内容は結構凝っていて「ライトノベル」とも言い切れない。

鎌倉にある古本屋『ビブリア古書堂』がこの小説の舞台。主人公はそこでアルバイトする若者で、ヒロインはさっき言った「眼鏡で人見知りの巨乳美人」の古本屋の店主。ただこの人、本に関しての知識と本に係る洞察力が半端じゃない。

殺人事件のような派手な謎は起きないけれど、日常のなかで起こるちょっとした事件を、本に関する情報を手がかりに見事に解決する。第1巻などでは怪我をして入院中にほとんど本に関する情報のみで事件を解決するのだから「アームチェア・ディテクティブ」の系統に位置する気もする。

事件の軽さとその謎を解く鮮やかさは、海外ではチェスタートンの「ブラウン神父シリーズ」や北村薫の「円紫さんシリーズ」などを連想させる(ちょっとほめ過ぎかな)。また本が重要な役割を担うミステリーではジョン・ダニングの『死の蔵書』とか思い出す。『死の蔵書』も古書に関して博覧強記を誇る刑事が主人公だった。

『ビブリア古書堂の事件手帳』でテーマになっている本は以下のとおり

【ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち】
第一話:夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波書店)
第二話:小山清『落穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)
第三話:ヴィノグラードフ・グジミン『論理学入門』(青木文庫)
第四話:太宰治『晩年』(砂子屋書房)

【ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常】
プロローグ:坂口三千代『クラクラ日記』(文藝春秋)
第一話:アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』(ハヤカワ文庫NV)
第二話:福田定一『名言随筆 サラリーマン』(六月社)
第三話:足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房)
エピローグ:坂口三千代『クラクラ日記』(文藝春秋)
キューブリックの映画化で有名なアンソニー・バージェスの『時計じかけのオレンジ』は、内容の異なる旧版と新版があるなんて知らなかった。確かめてみたら僕の持っているのは旧版のほうだった。

僕は重めのテーマを持った「Why done it?」系のミステリーが好きなので、ちょっと軽くて物足りない感はあったけど十分楽しめた。本に関する蘊蓄がいっぱい出てきたりするので本好きの人には楽しい時間が過ごせるんじゃないかな。あと、殺人事件なんかが出てくるシリアスなミステリーが苦手という人にもお勧めなシリーズですね。

宮部みゆきの『名もなき毒』すごく面白かった!

宮部 みゆき
文藝春秋 2011-12-06
¥ 890
宮部みゆきの『名もなき毒』が文庫本になって本屋さんの平積みにあったので読んだ。同じシリーズの前作である『誰か』があまり印象に残っていない作品だったのでそんなに期待していなかったのだが、すごく面白くて600ページ弱ある本を一気読みした。とにかく登場人物の心情の表現が上手い。

主人公は巨大コンツェルンのお嬢さんと結婚した逆玉の編集者なのだが、結婚の条件として経営に関与しようとしないことが条件になっている。このあたりの屈折した心情が一人称で語られる物語のベースにあってちょっとせつない。

ストーリーは、主人公の勤務先である社内報の編集部で働いていたアルバイトの女性社員がトラブルを起こして辞め、その後も執拗な嫌がらせを仕掛けてくる事件と、青酸カリのコンビニ商品への混入による無差別殺人事件とが同時進行する。主人公はその2つの事件に関わって翻弄される。

この作品のテーマは、一見普通の人のように見える人物が持っている『毒』が他人への攻撃を生むのだということ。たしかに我々に身の回りには思いもかけない悪意を持った人がいる。その怖さをこの作品は上手に描き出している。

終盤にかけて2つの事件は一気に解決するのだが、その収束の仕方が見事。伊坂幸太郎の小説もバラバラの事件が終盤で一気に収束するのが特徴だけど、伊坂幸太郎のが論理的な収束だとするとこちらは感情的な収束。宮部みゆきはどんどん上手くなるなぁ。

湊かなえや沼田まほかるなど女流作家の作品って人間のドロドロしたところが描けてて上手いなあとは思うんだけど、僕には読後感の悪さがちょっとしんどい。宮部みゆきも同じように人間のドロドロしたところを描いているのに読後感はすっきりしている。普通の人が持つ『毒』をテーマにしていながら、主人公やその周りの人は全然ドロドロしていなくて、それとなく善対悪の構図になっているのが心地いいのかもしれない。

いずれにせよとても面白い作品で、元々、宮部みゆきの小説はほとんど好きなんだけど、なかでもかなり上位に入る面白さだった。『火車』や『理由』もストーリーテラーぶりを発揮して凄く面白かったけど、『模倣犯』の続編である『楽園』や本作はストーリーテリングの上手さに人情味も加わってエンターテイメント小説として最強になった気がする。

宮部みゆきはスティーブン・キングが好きで、『クロスファイア』はスティーブン・キングの『ファイア・スターター』へのオマージュだし、『ブレイブストーリー』は『タリスマン』へのオマージュだと思われる。これだけ上手くなったんだからスティーブン・キングのSFじゃないナチュラル・ホラー作品へのオマージュを書いてくれないかなぁ。

宮部 みゆき
文藝春秋 2010-02-10
¥ 700
プロフィール

kaz

Author:kaz
本がとにかく好き。あとはテニス、映画、音楽、デジタル・ガジェットも。iPadラブ。

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