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一気読み『光圀伝』

冲方 丁
角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-09-01
¥ 1,995
冲方丁の『光圀伝』を読んだ。凄く面白くて一気読みした。以前、同じ作者の『天地明察』も読んだがやはり一気読みだった。その時のエントリー→ 『天地明察』と『エースをねらえ!』

もともと『マルドゥック・スクランブル』シリーズでSF作家として有名だった冲方丁だが、前作の『天地明察』で初の時代小説でいきなり傑作を書いて世間を驚かせた。それに続く時代小説2作目の『光圀伝』は前作に負けない傑作だと思った。とにかく読んでいて面白すぎて止まらない。

『光圀伝』は名前の通り水戸光圀の一生を描いた作品だ。あのTVシリーズでお馴染みの水戸黄門だが、TVの印象とは全く違う水戸光圀がここに描かれている。

光圀の生きた江戸初期はとても興味深い時代だ。特に光圀の若い頃は、3代将軍家光の治世で徳川幕府が安定期に入りつつある時代だった。戦は影を潜め文治の世となり、戦で名を挙げられなくなった武士は武道に劣らず文道も修練した。そういう時代背景において光圀も詩で天下を取るとの大志を抱いた。

また光圀は、詩を上達するうえの理論的バックグラウンドとして儒学を徹底的に学んだ。そして、水戸光圀は一生を通して「義」に生きることになる。「義」を大辞林でひくと5つの意味があるが、ここでは
儒教における五常(仁・義・礼・智・信)の一。人のおこないが道徳・倫理にかなっていること。(大辞林より)
を指す。

本書は、そのような環境の中で水戸光圀が
  • 兄を差し置いて水戸藩当主となった不義を解消して大義を全うすること
  • 若い時に誓った詩で天下を取ること
  • 伯父の尾張当主徳川当主の義直から引き継いだ日本に「史記」のような歴史書を作ること(それが「大日本史」となる)
の3つのライフワークを見出し達成するまでをつぶさに描いている。

この3つのライフワークを手がけるにあたって大きな役割を果たしたのは友と妻だ。それぞれ光圀の良き理解者であるとともに切磋琢磨するライバルでもある盟友だった(そういう理解者を持つことの素晴らしさは『天地明察』でも描かれていて、その時は主人公の安井算哲の盟友としての和算の天才・関孝和だった)。その存在がどれほど光圀を救ったか。それだけに、彼らを相次いで失った時の光圀の喪失感は深く、読んでいても辛かった。

また前作との違いは、マネジメント的視点が加わったことだろう。『天地明察』の安井算哲が命じられる側の人間だったのに対し光圀は命じる側の人間だから当然かもしれないが、前作にはない魅力になっている。

三顧の礼を持って招いた明の知識人・舜水の言葉に対し
『一日にしてなるのは紙の城である。百年の歳月をかけるのが石の城である。あなたは一日にしてなるような城を目指すべきではない』
この瞬間、光圀の中で何かが完全に吹っ切れた。あの水道工事のような突貫工事を延々と民に強いる王になってはならないと心のどこかで常に思い続けていた。だがどうにもならなかった。その焦燥の火を、たった今、この老いた賢人の優しい息吹が、あっさりと消し去ってくれた。
若くして水戸徳川の当主となり藩の改革を焦ってしまったことを省み、藩の運営に長期的な視点を持つようになる。

また、子供の縁談を大老の酒井に持ちかけた時に
だから、じっくり布石を打つ。光圀と酒井が、布石を打っているという態度も隠さず城中で見せる。そうすることで既成事実を積み上げていく。
(こうまで、焦ることを知らぬか)
初めて見る生き物に出くわした感じだった。こういう性質を持った人間を将軍補佐に据えた、今は亡き老中たちならびに正之の見識にこそ、惚れ惚れする思いだった。
と、長期的な視点を持つ人物を評価できるようになった。

人物を育てることも含めて長期的な視点を持って事業を運営してゆく大切さを肌で感じさせてくれるマネジメントの教科書にもなっていると思った。

なにはともあれ読んでいてワクワクします。前作の『天地明察』とともにお勧めの一冊です。

冲方 丁
角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-12-01
¥ 1,890

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