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『競争と公平感―市場経済の本当のメリット』

競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)競争と公平感―市場経済の本当のメリット (中公新書)
(2010/03)
大竹 文雄

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『競争と公平感』は経済学者の大竹文雄さんの本。日本人の市場経済主義嫌い、男女昇進格差問題、非正規雇用問題、などについて、実証研究のデータを使ってわかりやすく噛み砕いた楽しい読み物になっている。

同じようなアプローチは経済書では『ヤバイ経済学』があったけど、『ヤバイ経済学』のテーマが経済とは関係の少なそうなものを経済学的アプローチで分析したものだったのに対し、この本書はまっとうな経済の問題をデータを用いてわかりやすく説明することに主眼がおかれている。

また『デフレの正体』も同様のアプローチだったけど、『デフレの正体』は日本経済の停滞の原因について実証研究のデータを用いて問題提起するというもので、本書は日本の抱えている問題をわかりやすく教科書的に説明したもの。

その他、マルコム・グラッドウェルの本も分野は異なるが同様のアプローチ。自分たちの常識だと思っているものがデータで見てみると案外違っているケースは多くて、それをわかりやすく教えてくれるのが非常に面白い。


内容で興味深かったのは、日本人の市場経済とセイフティネットへの考え方のデータ。

日本の市場経済への信頼が49%と主要国の中で最も低く、中国の75%より低いのが興味深い。

「自立できない非常に貧しい人たちの面倒をみるのは国の責任である」という考えに賛成している割合も、日本は国際的に際立って低い。

日本は市場経済への期待も国の役割への期待も小さいという意味でとても変わった国である。

と資本主義の国であるにもかかわらず、市場経済に対する理解度が低いことが明らかにされる。

その理由として

小泉政権の政策は、市場主義的な政策と財界の利益誘導、利権獲得の両方が混じったものになっていたと解釈できる。(中略)結局、一番割りを食ったのが市場主義である。市場主義が既存大企業を保護する大企業主義と同一視されてしまったために、反大企業主義が反市場主義になってしまっているのではないだろうか。

としており、納得の出来る仮説だと思う。

男女の雇用格差については

同志社大学の川口章教授の研究によれば、女性雇用比率が高いほど企業の利潤が高く、革新的な経営手法を取り入れている企業ほど女性社員が活躍し、企業のパフォーマンスがいいそうだ。

とするものの

男性のほうが女性より競争が好きで自身過剰だから、同じ実力であれば男性のほうが昇進競争に参加することが多くなる。この結果、昇進競争の勝者である管理職の比率も男性のほうが多くなる。

そして

男女の間の競争にさらされ対する選好の差は、一部は性ホルモンといった生物学的要因に起因していそうだが、マサイ族とカシ族の差や共学と女子校の差、競争相手の性別による差などの研究結果をみると、文化的な要因による差のほうが大きそうだ。

としている。

事業仕分けについての分析も面白い。

政策効果の検証にはかなり高度な経済学の知識や技術とデータが必要で官僚や仕分け人には期待できないため、データを一般に公開し経済問題解決のアイデアを世界中の研究者から出してもらうというアイデア。実際にアメリカでは行われている。

と、役所が保持しているデータの公開を提言している。

市場経済および市場競争については

たしかに、市場が失敗する例は多い。しかし、それでも市場がうまく機能する場合も多い。スーパーに商品がたくさんあり、売れ残りや、品切れが少ないのは、市場がうまく機能しているからである。(中略)最近では、社会主義国がほとんどなくなったため、私たちが市場経済のメリットを感じることが少なくなってきているのかもしれない。

市場経済のメリットとは「市場で厳しく競争して、国全体が豊かになって、その豊かさを再分配政策で全員に分け与えることができる」ということだ。

市場競争は、誰に取っても厳しいものである。(中略)それでも市場競争という仕組みを私たちが使っていくのは、市場競争のメリットがデメリットよりも大きいからである。より豊かになれること、誰でも豊かになれるチャンスがあることが大きなメリットである。

とし、市場競争によって生じる不公平感をなくす方法については

いったん市場を独占した企業が、その独占的状況を利用して価格を引き上げたり、製品の性能向上努力を怠ったりすれば、消費者は結果的に損をしてしまうだろう。そのような独占による競争の欠如がもたらす損失を防ぐ努力が、ルールを設定する側には求められる。つまり、市場が常に競争的な状況に保たれるようさまざまなルールを作っていく必用が政府にはあり、また私たち消費者は、競争的な市場を形成するために政府が努力するよう監視する必用がある。

スポーツと同様、現実の社会でも強い人を不利にするような改正を不公平と感じることもあれば、逆に弱い人たちを有利にするような改正を公平だと感じることもあるだろう。しかし、何を目的にルールを設定しているのかを人々が理解していれば、ルール改正に伴う人々の不公平感は減り、その改正を納得する人たちが増えるのではないだろうか。

と非常に分かりやすく説明されている。

全体を通して豊富な実証研究のデータを示しつつ、非常に分かりやすい読み物になっていて、日本経済の現状や経済学の基本概念の一部を楽しく勉強するにのにお勧めの1冊である。


関連記事
・『デフレの正体』
http://kaz1116.blog84.fc2.com/blog-entry-20.html
・『天才! 成功する人々の法則』
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