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『街場のメディア論』は非常に分かりやすく刺激的なメディア論

街場のメディア論 (光文社新書)街場のメディア論 (光文社新書)
(2010/08/17)
内田 樹

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『街場のメディア論』はつい先日、神戸女学院大学での最終講義が話題になった内田樹さんの本。神戸女学院大学で2007年に行われた「メディアと知」という題名の大学二年生対象の入門講義が元になっているということで、とてもわかりやすくて刺激的な内容になっている。マスメディアを抽象的に非難する文章はよく見るがここまでわかりやすく具体的に書いてある文章は珍しい。

『街場の○○』シリーズとしては4冊め。これまで『街場のアメリカ論』『街場の中国論』の2冊は読んだので、僕にとってはこれが『街場の○○』シリーズでは3冊めになる。

元になっている講義は「これからメディアの世界でキャリアを形成することを希望している」学生さんたちを対象としたものなので、社会人になるに当たっての心構えの部分とマスメディアの現状と展望の2つがテーマとなっている。

社会人としての心構えについては

みなさんの中にもともと備わっている適性とか潜在能力があって、それにジャストフィットする職業を探す、という順番ではないんです。そうではなくて、まず仕事をする。仕事をしているうちに、自分の中にどんな適性や潜在能力があったのかが、だんだんわかってくる。そういうことの順序なんです。

平たく言えば、「世のため、人のため」に仕事をするとどんどん才能が開花し、「自分ひとりのため」に仕事をしていると、あまりぱっとしたことは起こらない。

という言葉に心から賛同。

マスメディアの現状と展望に関しては、マスメディアの巨大ビジネス化によるジャーナリズム精神の堕落、匿名記事による無責任化をマスメディアの制度的な崩壊の原因としている。

マスメディアの巨大ビジネス化によるジャーナリズム精神の堕落については

テレビの場合、放送するためにはお金もかかるし、機材も要るし、人間も要るし、スポンサーや政治家や行政の干渉にも応接しなければならない。だから、「つつがなく放送する」ことそれ自体が事故目的化する。それはやむを得ない。でも、それはシステムとしてはきわめて脆弱だということを意味しています。

おのれの無知や無能を言い立てて、まず「免責特権」を確保し、その上で、「被害者」の立場から、出来事について勝手なコメントをする。この「被害者面」が特に目に付くようになったのは、この数年です。

と一刀両断。

匿名記事による無責任化については

メディアが急速に力を失っている理由は、決して巷間伝えられるように、インターネットに取って代わられたからだけではないと僕は思います。そうではなくて、固有名と、血の通った身体を持った個人の「どうしても言いたいこと」ではなく、「誰でも言いそうなこと」だけを選択的に語っているうちに、そういうものなら存在しなくなっても誰も困らないという平明な事実に人々が気づいてしまった。そういうことではないかと思うのですが。


さらにマスメディアの体質についても

社会制度への劇的変化が起こると、「これから何が起こるかわからない」という不安が生まれます。「何が起きているのか知りたい」という情報へのニーズはメディアにたしかな商業的利益をもたらす。それが無意識のものである以上、メディアが「変化を求める」ことは誰にも止められません。変化のないところにさえ変化を作り出そうとする。変化しなくてもよいものを変化させようとする。何も変化しないで順調に機能している制度に無理に手を突っ込んでも変化を起こそうとする。変化への異常なまでの固執。それは近代のメディアに取り憑いた業病のようなものです。

と語る。

その他、全体を通して、市場原理の導入がふさわしい分野とふさわしくない分野があり、メディアや出版は教育、医療と同様にふさわしくない分野である。にもかかわらず所かまわず市場原理を導入したために、制度的な破綻が起こりつつある。特に出版の場合、本来、本と読者を「商品」と「消費者」としてとして扱うべきではなく、「贈り物」と「受け取り手」として扱うべきである、というテーマが主張されていて、これにも凄く納得した。

電子書籍についての

電子書籍が読者に提供するメリットの最大のものは「紙ベースの出版ビジネスでは利益が出ない本」を再びリーダブルな状態に甦らせたことです。絶版本、稀覯本、所蔵している図書館まで足を運ばなければ閲覧できなかった本、紙の劣化が著しく一般読者には閲覧が許可されなかった本、そういった「読者が読みたかったけれど、読むことの難しかった本」へのアクセシビリティを飛躍的に高めえたことです。

という見識にも激しく同意。

あと内田樹さんがネット上で公開したテクストの著作権を放棄している理由は

それは僕にとって、書くことの目的が「生計を立てること」ではなく、「ひとりでも多くの人に自分の考えや感じ方を共有してもらうこと」だからです。もし僕の書いていることの中にわずかなりとも世界の成り立ちや人間のあり方について掬すべき知見が含まれているなら、それをできるだけ多くの人に共有してもらいたい。僕としては、僕と意見を同じくする人の数が多ければ多いほどありがたい。

ということで、素晴らしい姿勢を取り続けてらっしゃるなと感じた。

情報に対する態度としては

情報を評価するときに最優先の基準は「その情報を得ることによって、世界の成り立ちについての理解が深まるるかどうか」ということです。

という言葉が参考になった。

この本もそうだけど、内田樹さんのブログや著書はいつもわかりやすくて本当に素晴らしいと思う。僕がなんとなくもやもやとして表現しきれないようなことを、簡潔かつ平易にスパッと表現してくれる。頭の中の整理が良くできていることと文章の旨さなのだろう。見習いたい。

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