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『月は無慈悲な夜の女王』は革命の教科書

月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 1748)月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 1748)
(2010/03/15)
ロバート・A. ハインライン

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最近、チュニジアやエジプトで起きた革命が話題になっているが、それで思い出したのはロバート・A・ハインラインの『月は無慈悲な夜の女王』。月世界の地球からの独立革命を描いた作品。

傑作SFを数多く書いたハインラインの作品の中でも『異星の客』『宇宙の戦士』と並ぶベスト3だと思う。『夏への扉』はタイムトラベル物の傑作でリリシズム溢れた佳作ではあるけど、これら3作品には重厚な世界観や人間味あふれる登場人物で若干見劣りする。

『月は無慈悲な夜の女王』の基本的なストーリーは月世界が革命を起こして地球から独立するというもの。それだけ聞くとたいしたことがないように思えるが、この月世界の設定や登場人物がすこぶる魅力的なのだ。

この作品での月世界は何世代にもわたっての犯罪者の流刑地であり、そこには法律などない。ただ環境に適応して生まれた暗黙のルールと厳しい生存環境のなかで淘汰され鍛え抜かれた月世界人が存在するだけ。

われわれ月世界の市民は前科者であり前科者の子孫です。だが月世界自体は厳格な女教師なのです。その厳格な授業を生き抜いてきた人々には、恥ずかしく思う問題などありません。月世界市では何の注意もせずに財布を置いておこうが、家に鍵をかけないでおこうが、恐れることはありません・・・(中略)われわれはいまや武装した下層階級なのです。

地球にあるどの都市を考えても、この月世界におけるほど高い水準の礼儀作法と他の人々に対する思いやりを持った市民に恵まれたところはないよ。

と自然に出来上がったルールとお互いに対する尊重によって礼儀正しく平和かつ厳しい文化が築かれている。そして月世界人は血統改良されて完成されたボクサー犬のように訓練された危険な戦士になっている。(この辺り『砂の惑星』のフレーメンと通じるところがある)

さらにこの作品を魅力的にしているのは、自意識を持ったコンピュータのマイクと革命の指導者となるベルナルド・デ・ラ・パス教授の存在。

月世界政府のメインコンピュータが他のコンピュータやメモリバンクを臨海量を超えて接続された結果、何時の間にか自意識を持つことになり、主人公だけに見いだされマイクと名付けられて、さらには革命に参加し重要な役割を担う。マイクが膨大な知識を持ちながらユーモアはさっぱりわからない小学生のような存在から徐々に成長して同志になっていく過程がまた楽しい。

ちなみに、マイクはIBMの創立者のDr.ワトソンとの連想から主人公がホームズつながりでつけた名前マイクロフト・ホームズ(名探偵ホームズの兄)の略称。

ベルナルド・デ・ラ・パス教授は知識と知恵に富んだ元教師の老人。反骨精神があり偏見を持たない現実主義者で人間的にも優れた魅力的な人物。ハインライン作品ではこういうタイプの老人がしばしば登場して敬愛の年を持って描かれている。僕は勝手な思い込みでバーナード・ショーとイメージをダブらせている。

このような圧倒的な世界設定と魅力的な登場人物、それに加えて定評のあるハインラインのストーリーテリングとくれば面白くない方がおかしい。600ページ弱ある分厚い本だけど、革命の熱に伝染してワクワクしている間に一気に読めてしまう。

1966年発行の古典的なSF小説だが、全く古さを感じさせないところが凄い。ファンは多いんだろうな。浦沢直樹の『PLUTE』で最も泣けるエピソードの『ノース2号の巻』で盲目の天才音楽家が音楽をつけた映画のタイトルが『月な無慈悲な夜の女王』となっている。

最後に、ベルナルド・デ・ラ・パス教授の名言を2つ。
一つ目は、革命について

革命は大衆を同志にすることで克ち取られはしないのだよ。革命は、ごく少数の人々が実行することのできる科学なのです。それは正しい組織を持っているかどうか、とりわけ、意志の疎通如何にかかっているのですよ。そして、歴史における適当な時期に、実行するのです。正しく組織されており、うまく時期が合っておれば、それは無血革命ということになるのです。無器用に、あるいは時期尚早なときに行われると、その結果は、内乱、群衆による暴力行為、追放、テロです。

二つ目は、戦いについての言葉

できるなら、きみの敵をきみの友人とする余地を残しておくことだ。





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No title

次に読む本は決まったな。

Re: No title

是非!何度読んでも面白いよ。
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Author:kaz
本がとにかく好き。あとはテニス、映画、音楽、デジタル・ガジェットも。iPadラブ。

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