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作家志望じゃないミステリー小説ファンにとっても最高に面白い『ミステリーの書き方』

ミステリーの書き方ミステリーの書き方
(2010/12)
日本推理作家協会

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『ミステリーの書き方』は43人ものミステリー作家に、各自のミステリーの書き方を取材したもの。ミステリー小説を書きたい人に参考になるのはもちろんのこと、ただ読むことが好きなミステリー小説ファンにとっても最高に面白い。

この本を読むきっかけになったのは、この↓はてブエントリーで乙一の「プロットの作り方」が紹介されていたのをTwitterで見かけたから。
乙一の穴埋め式プロット作成術。 - Something Orange


この乙一の部分だけでもすごく興味深い。それが43人分も入っているのだから堪らない。

このように本書では、それぞれの作家が自分がミステリーを書くときに注意していることやどんな風に作品を作り上げていくのかというような楽屋裏を覗くことができる。映画の「メイキング」と同じような面白さだと思う。

あたりまえだけど、自分の好きな作家のところは特に面白い。個人的に興味深かった箇所をいくつか挙げると

東野圭吾は小説のアイデアについて、

もとになるアイデアは自分の中にたくさん持っていないといけない。トリックにしてもそうで、日常生活の中で意外に感じたりしたことを全部ストックしておくしかないわけです。そして、なぜ自分が意外に思ったのかを掘り下げていく。

僕は本からも映画からもテレビからも「これは意外だ」という発見をすることがありますが、意外に思った体験をそのままにしておくのではなく、なぜ意外に思ったのか、そのときの自分の気持ちを重視します。そこを突き詰めていくと、小説のアイデアに突き当たる。

なるほど、東野圭吾があれほど面白い作品を量産できるのって、そういう意識の持ち方の結果なんだなと納得した。

宮部みゆきは

ミステリーを書くときに一番気をつけているのは、謎解きに関わる人間の動機なんです。犯人の動機よりも、むしろそっちのほうが大事です。好奇心にかられてとか、放っておけないからとか、そういうものとは違う、もっと切実な、しかも日常に近いところにある動機。それがないと、そんなの警察に任せればいいじゃないかって話になりますから。

そうか、宮部みゆきの小説に虚構の中でのリアリティがあるのってそういうことだったのか。
あと、もう一点面白かったのは細部を書きすぎるということについて

描写に淫するっていうのは(笑)、スティーブン・キングの影響がすごくあると思います。

たしかにキングと宮部みゆきに共通するのは、どこまでも細かい描写によるリアリティ表現なんですよね。キングも宮部みゆきも僕はそこが好きなんだけど。

乙一はプロットの作り方について、

小説は文字が連なってできている一本の線だ。一本の線には両端がある。つまりはじまりと終わりのことだ。その二つをここでは発端と結果と呼ぶ。すべての物語は発端と結果を結ぶ線なのだ。ミステリを書くならば、発端と結果はすなわち、事件の発生と解決のことである。
 しかしその二つを結ぶ線が平坦で何の盛り上がりもなければ読者は飽きる。一本の線をどこかで折り曲げてジェットコースターのレールのように波打たせなければならない。そうして読者の心を揺さぶる必要がある。その折り曲げるポイントを把握するため、私はいつもプロットを書く。

このように乙一は映画のシナリオ理論に基づいてきわめて合理的なプロット作りをしていることがわかる。乙一は感覚的な作家だと思っていたので、これはとても意外だった。

北村薫は表現について、

表現する者の目になってみると、いろんな細かいものが自然に見えてくるはずなんです。そういう目を持った人が、表現者なんです。<書く>ということが表現ではなく、<見る>ということが表現なんです。

深いな。これってミステリーだけじゃなくて一般的に文章を書く心構えとしても言えてますね。

伊坂幸太郎は、

僕は、最初にあまり綿密なプロットは立てられないんです。書きたい場面や書きたいモノがあるだけで、映画でいえば、予告編のようなイメージしか持っていません。書きたい場面や「絵」があって、それらをつないでいくパターンが多いですね。

僕はデビュー前は特に、書店に自分の本が並んでいて、それをどうやったら読者に手に取ってもらえるか、とよく考えていました。あまりに本がたくさん並んでいるので。だから、そのためにはタイトルと書き出しが重要だと思ったんですね。なんというタイトルの本で、どんな書き出しの本なら僕は手に取るだろうかと想像していました。”誰かに届けたい”という思いがたぶん、一番大事なように思います。

僕の中では、乙一と伊坂幸太郎がとても才能が豊かな比較的若手の作家なんだけど、乙一が感性、伊坂幸太郎が論理の作家という認識だった。でもこれを読むと、それが逆だったということがわかって面白い。

香納諒一は好きな作家には入っていないけれど、作家志望の人へのアドバイスが目を惹いた。

本気で物書きになりたいのでしたら、道は簡単で、現在の十倍努力すればいいのです。さらに換言すれば、才能とは決して大それたものではなく、十倍の努力とは何かが自分で想像がつき、それを挫折せずにいつまででも継続することができることだと私は思います。

おそらくこれは作家だけではなくすべての専門家に当てはまる言葉だろう。

ここでは、僕が個人的に好きな作家の作品の種明かし的なことで興味深く感じた部分を紹介したが、他にミステリー小説固有のテクニカルなアドバイスなんかも多数あり、ミステリーを書きたいと思っている人にとっても興味深い本になっていると思う。

480ページ、二段組みなので非常に情報量が多く、すべてを精読できたわけではないので、また時間ができたときに、ゆっくりじっくり読むことをこれからの楽しみに取っておこう。

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本がとにかく好き。あとはテニス、映画、音楽、デジタル・ガジェットも。iPadラブ。

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